箱根・芦ノ湖にたたずむ「箱根神社」の“平和の鳥居”

関東圏で水上の鳥居といえば、箱根・芦ノ湖に面した箱根神社が有名です。神社の境内には6つの鳥居があり、そのうち湖畔にそびえる真っ赤な鳥居が「平和の鳥居」と呼ばれています。
湖上の鳥居が建てられたのは昭和27年。上皇陛下の立太子礼(皇太子であることを公に告げる儀式)と日本の独立(講和条約の締結)を記念して建立されました。昭和39年には、箱根神社の鎮座1200年と東京オリンピックの開催を記念して「平和」の扁額を掲示。以来「平和の鳥居」として親しまれています。
吉田茂元首相の真筆という「平和」の文字は、芦ノ湖の遊覧船や観光船から見ることができます。船上からは富士山の姿を望めることも。湖面に揺れる鳥居を遠くからゆったりと眺めるのもまた格別ですね。
琵琶湖に映える「白鬚神社」の湖上鳥居

近江最古の大社として知られる滋賀県の「白鬚(しらひげ)神社」には、琵琶湖に浮かぶように建つ水上鳥居があります。神社は地元で「白鬚さん」「明神さん」として親しまれ、「近江の厳島」と呼ばれることもあるよう。
鳥居の建立は昭和12年。現在のものは昭和56年に建て替えられましたが、湖中には大昔から鳥居があったとの言い伝えも。実際の鳥居が確認された記録はないものの、室町時代の屏風絵や江戸時代の縁起絵巻には湖中の鳥居が描かれています。
「天下に異変が起こる前触れとして、湖に突然鳥居が現れた」という伝説も残されており、どこか神話のようなロマンを感じさせてくれるスポットです。国道沿いに建つ神社はアクセスもよく、旅の途中にふらっと訪れるのにもぴったり。大鳥居越しに眺める日の出も絶景ですよ。
龍宮伝説の地に立つ「和多都美神社」の海中鳥居

最後に紹介するのは、長崎県対馬市にある和多都美(わたづみ)神社。海の神・豊玉彦命(とよたまひこのみこと)が、当地に「海宮(わたづみのみや)」という宮殿を建てたことが始まりとされ、今なお龍宮伝説が語り継がれる場所です。
本殿からは海に向かって一直線に5つの鳥居が並び、そのうち2つは海中にそびえています。海中の参道は、まるで竜宮城へと続くかのよう。満潮時には社殿の近くまで海水が迫り、あたり一帯が神秘的な雰囲気に包まれます。なお干潮時には、海中の鳥居まで歩いて近づくことも可能です。
境内には龍宮を感じさせる御神木も。潮風を頬に受けながら対馬の美しい海を眺め、龍宮伝説に思いを馳せる…。そんな非日常のひとときを味わいたい人にもおすすめのスポット。渡海船に乗って、チルな旅を満喫するのもいいですね。
水上にたたずむ鳥居には、神社としてのパワースポット的な魅力はもちろん、心をそっと落ち着かせてくれるような不思議な力があります。波の音や水面の揺らぎを感じながら過ごす時間は、心を静かに整え、思考をクリアにしてくれるはず。気になる鳥居があった人は、次の旅先に選んでみてはいかがでしょうか。