意外と知らない“泉質”の定義と種類

そもそも温泉とは、昭和23年に制定された「温泉法」によって定義されたもの。具体的には地中から湧き出ている温水などの温度が25℃以上で、指定された物質を含んでいる場合にのみ“温泉”として認められます。そして温泉の中でも、とくに療養に役立つ成分が入っているものは“療養泉”に分類。その療養泉を特徴ごとに分けたものが“泉質”です。
現在環境省が指定している泉質は全部で10種類。たとえば泉温25℃以上でガス以外の水に溶け出た成分が1000mg/1kgであれば、「単純温泉」と呼ばれる泉質に分類されます。単純温泉は刺激がマイルドなのが特徴。浸かると自律神経不安定症や不眠症などに効果的です。
“泉質別適応症”に注目して効果的な温泉選びを

一般的に“熱の湯”として知られているのが、「塩化物泉」という泉質。温泉に含まれる陰イオンのうち、主成分が塩化物イオンの場合に定義されます。入ると肌に塩分が付着するため、保温効果や循環効果を発揮。切り傷、末端循環障害、冷え性といった症状の改善に期待できます。
ちなみに塩化物泉には、飲用により萎縮性胃炎や便秘を治す効果も。このような温泉ごとに改善が期待できる症状は“泉質別適応症”として示されているので、どの泉質の温泉に入るか迷った際にはひとつの指標として活用できるでしょう。
はじめての温泉では“禁忌症”に注意

「単純温泉」や「塩化物泉」の他にも、“美人の湯”と呼ばれる「炭酸水素塩泉」、“泡の湯”として有名な「二酸化炭素泉」、放射能物質であるラドンを微量に含んだ「放射能泉」などがあり、それぞれ効能や泉質別適応症が異なっているのが特徴です。自分に合った泉質の温泉を選べるとプラスの効果が得られますが、体質や症状によっては逆効果になってしまうことも。とくに環境省は、温泉利用に関する“禁忌症”の注意を呼びかけています。
禁忌症とは、一度の入浴や飲用でも身体に有害な影響を与える可能性のある病気・病態のこと。たとえば皮膚または粘膜が弱い人は、泉質が酸性泉や硫黄泉の場合“湯ただれ”と呼ばれる皮膚炎が引き起こされるおそれがあります。またナトリウムイオンを多く含んだ温泉水を飲む際、腎不全・高血圧などを患う人は指定の飲用許容量を守る必要があるでしょう。
なお泉質の種類にかかわらず、著しく体調が悪い場合や重度の症状を抱えている場合は入浴を避けるのがベター。温泉に入っても大丈夫かどうか判断に迷った際は、医師へ相談してください。
泉質が持つ効能を十分に発揮させるためにも、自分の体質との相性を浴用と飲用の両側面から知っておくことは大切です。温泉に足を運ぶ前にはぜひ泉質の情報もチェックして、有意義なリラックスタイムを過ごしてみてはいかがでしょうか。