1.里山のくらしを五感で感じる「Satologue」
2024年5月、JR青梅線沿線・東京都奥多摩町にオープンした「Satologue(=さとローグ)」。沿線全体をホテルに見立てる地域活性化プロジェクト『沿線まるごとホテル』の最初の施設として誕生しました。
Satologueのコンセプトは『里とつむぐ、物語』。「里(=sato)」と「語り(=logue)」を組み合わせたネーミングには、ここ奥多摩の歴史や文化、人々と交流や生き方、魅力あふれる自然を語り、紡いでいく、そんな想いが込められているそうです。
駅はホテルのフロント、村道は客室まで続くろう下。駅の到着から世界観に浸ろう
沿線をまるごとホテルと見立てた、ユニークな世界観が楽しめるのもSatologueの魅力。最寄り駅「鳩ノ巣」駅は、Satologueにとってホテルの顔となるフロント。つまりは玄関口です。
駅に到着した瞬間、やさしく佇む山々がお出迎え。「ただいま」と言いたくなるような、澄んだ空気が流れています。
ホテルのろう下に見立てた、駅からの村道を20分ほど歩けば「Satologue」に到着です。
築130年の古民家を改修して作られたレストラン棟へ
到着したのは、築130年の古民家を改修してつくられたレストラン棟。
入り口となる2階にレストラン「時帰路(TOKIRO)」、1階にはサウナ専用のラウンジとサウナ棟「風木水(FUKISUI)」があります。
完成してから日が浅いこともあり、室内はどこもピカピカ。どこか昔なつかしいあたたかさがありながらも、新しさも混ざっていてワクワクさせてくれる空間です。レストランはのちほどじっくり。
2025年春には、レストラン棟の横に宿泊棟が完成予定。どんな里山ライフが体験できる場所になるのか、今から楽しみです。
2.コンクリート倉庫を改修した薪サウナ「風木水」
まずは、サウナ棟「風木水」へ。
敷地内にあったコンクリート倉庫をサウナへ改修した、スタイリッシュな佇まいがとにかく目を惹きます。すてきすぎてついつい写真を撮りたくなる……!
サウナ棟「風木水」のテーマは、林業で栄えた奥多摩の地の記憶をつなげる。
林業で栄えた歴史をもつこの土地の薪を使った「薪サウナ」や、川の水をそのまま引き上げた「水風呂」、本物の自然につつまれる「外気浴」。薪、水、空気……身体に触れるものすべてでこの土地の自然と繋がれる、そんなサウナ体験が叶う場所です。
ひのきをふんだんに使用したというサウナ室。扉を開けた瞬間、ひのきの香りが鼻の奥を刺激してくれます。
天然アロマを思いっきり吸い込んで、呼吸をととのえたら、お好みの座面へ。
2段のベンチと、印象的な傾斜が気になる1段ベンチ。どちらもゆったり座れる設計で、居心地は抜群。
室内の温度は、70度ほど。ロウリュすれば、蒸気がじゅわ〜っと上がるのを目でも楽しめます。
ぱちぱちと音を立てて燃える薪をぼ〜っと眺める時間は、まさにチルそのもの。
なんとも言えない豊かな香りと蒸気に包まれると、自然と心も浄化されていくような……。ほかとは替えがきかない、そんな特別な時間が流れているように感じました。
サウナからわずか10歩で多摩川の水に浸かる贅沢な時間
水風呂は、サウナを出てすぐ目の前。
水風呂には、サウナ棟のすぐ横を流れる多摩川支流の川の水をくみ上げて使用しているとか。チラー(=冷却装置)などは入れず、自然の恵みをダイレクトに感じられる贅沢な水風呂です。
サウナでほてった身体をとっぷり水風呂に浸けて、目を閉じれば、聞こえてくるのはザーッと勢いよく流れる川の音だけ。まるでそのまま多摩川に浸っているような、そんな気分を味わえるチルな水風呂でした。
まずは、目の前の「芝生のととのいスペース」へ
1セット目は、ぜひ目の前の芝生エリアで休憩を。
座り心地ばつぐんのラフマチェアに全身をあずけて、ふうと顔を上げれば視界いっぱいに緑と空が広がります。
自然の音に耳を傾けて心と身体を開放すれば、いとも簡単に自然と調和する贅沢な時間に。
東京でもこんなに澄んだ空気と緑を感じられる場所があるのだと、誰かに教えたいような、教えたくないような……。そんな特別な感情が芽生える瞬間を味わえます。
自然と童心に帰れる魅惑のデッキスペース
2セット目は、ポンチョを羽織ってウッドデッキスペースへ。
ウッドデッキから足を投げ出して、高台からの景色をゆったり満喫していると、不思議とこどもの頃に訪れた祖母の家を思い出しました。ありのままの自然に囲まれると、おとなは童心に帰れるのかもしれません。
本当はひみつにしておきたい、唯一無二のととのい場
身体も心も十分に温めて足を伸ばして欲しいのが、ここ。敷地内の一番奥まった場所にあるひみつのととのい場です。
サウナ棟から少しだけ離れていることもあり、非日常な時間に浸るにはもってこい。360度生い茂る緑と通り抜ける風を感じて、ただただこの土地の空気に包まれます。
ツラくて嫌なことがあっても、またここに座って深呼吸すれば、少しだけ心の重さを軽くできる気がする。そんなエネルギーを感じる魅惑的なスポットでした。自然って本当に尊い……。
惚れぼれする美しいラウンジでサウナめし
五感を刺激するサウナで心と身体を開放させたら、サウナ利用者が自由に使えるラウンジへ。
まずはゆったりソファに腰かけて、目の前に広がる美しい景色に「追いととのい」を。
景色を堪能しつついただくのは、身体の渇きをチャージしてくれる「オリジナルオロポ」と「ヤマメ照り焼きバーガー」。オロポには土地で育ったしそを使っているそうで、甘さは控えめ。最後までごくごく飲めるのがうれしいです。
ヤマメ照り焼きバーガーには、この土地で採れたヤマメをすり身にした「やまぼこ」を使用。バンズはふわっと軽く、サウナ後でもパクッと食べられるボリュームです。敷地内で自家栽培したハラペーニョの葉っぱがいいアクセント。
ここでしか食べられない特別なサウナめしをぜひ。
3.地域の食材をふんだんに楽しめるレストラン「時帰路」
この土地の食体験に興味がある方は、ぜひ2階の「時帰路」へ。奥多摩や青梅由来の食材を使った「沿線ガストロノミー」を堪能できるレストランです。
食事の前にまず楽しんで欲しいのが、大きな窓の外に広がる豊かな自然。
「特等席」と言うべきカウンター席からは、多摩川の清流、奥多摩の山々をゆっくり満喫できます。この時間、チルすぎる……。
地元の食材をフルに活かしたコース料理に舌鼓
こちらのレストランでいただけるのが、地域の食材を生かしたコースメニュー。
多摩川上流域の豊かな水で育った川魚、敷地内の畑で育てたミントやハラペーニョ、ご近所の方から提供してもらったいちじくの葉などなど……ここ青梅沿線エリアで育った食材がふんだんに使用されています。
サウナで味覚が敏感になった後だからか、香りや味をより実感できて、普段の食事よりも何倍も楽しめた気がします。食材の一つひとつにストーリーがあるのも印象的。
食を通じて、奥多摩の暮らしに触れているような、そんな特別な時間が過ごせました。
4.Satologueは触れるものすべてが愛おしくみえてくる場所
食を満喫したあとは「お庭」を散策。
かつて「養魚場」が営まれた生簀を再生したわさび田や自家農園などが設置されており、里山のくらしを実感できるスポットです。ただただ歩いているだけでも楽しい。
何気ない景色に心奪われたり、この土地ならではの歴史に触れてあたたかい気持ちになったり。手を加えすぎないありのままの自然を感じて、里山ライフを体験できる「Satologue」。
空気、水、薪、食……身体に触れるものすべてを大切にしまっておきたくなる、そんな尊い時間を過ごしたのは久しぶりでした。ぜひみなさんもこの場所で、自分だけの特別なものを見つけてみてください。
取材・執筆:はせがわみき