サウナの本場フィンランドから届いたドキュメント
2019年9月に日本で公開されたドキュメンタリー作品『サウナのあるところ』は、サウナの本場・フィンランドを舞台にしたド真ん中のサウナ映画。フィンランドの春夏秋冬の美しい風景とともに、さまざまな人々がサウナで語り合う様子が描かれています。
サウナの様式は多岐にわたり、ランプを吊るしたテントサウナ、湖にそのまま飛び込めるサウナ小屋、さらには電話ボックス型のサウナまで登場。そんなサウナを利用する人々たちにフォーカスして、人生の悩みや苦しみについて語る姿を映し出しました。
ヨーナス・バリヘル共同監督によると、フィンランド人が誰かをサウナに誘う場合、「深い会話をしたいという暗黙の了解のような意味」があるそう。交錯する人々の思いや本場のサウナ事情を知れるとあって、「社交場としてのサウナが描かれているのが良い」「フィンランドのサウナ文化、憧れるなあ」と高い評価が寄せられています。
サウナ大好き監督が撮った日本のサウナ映画
日本のサウナ映画も負けていません。閉店するサウナの最終営業日に集う人々にスポットを当てた作品が、松居大悟監督の『サウネ』。2022年の短編映画プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS Season3」に収められた9作品の内の1本です。
登場するキャラクターは、女性スタッフに想いを寄せる男や初めてサウナにきた男、熱波師の男など個性豊か。サウナを舞台に、事情を抱えた男たちの姿がどこか切なくもユーモラスに描かれています。短編作品ながら、磯村勇斗さんやマキタスポーツさんら豪華なキャストが名前を連ねているのもポイント。
『ちょっと思い出しただけ』などの作品で知られる松居監督は“大のサウナ好き”としても有名で、Xに「サウナが好きすぎて、サウナ強者達と短編『サウネ』を作ってしまいました。ぬるいぐらいの炭酸泉も好きです」と投稿したことも。まさに“サウナーのためにサウナーが作ったサウナ映画”と呼べるのではないでしょうか。
古びた銭湯を舞台にした温もりあふれる群像劇
2023年2月公開の映画『湯道』は、サウナがメインではないものの、銭湯を舞台にした“湯”一無二のお風呂エンターテインメント。亡き父が遺した「まるきん温泉」をめぐって反発し合う兄弟を中心に、一癖も二癖もあるキャラが心を通わせ合う人間模様が温かく描かれました。
まるきん温泉に戻ってきた主人公・史朗を生田斗真さんが演じ、史朗の弟・悟朗役に濱田岳さん、銭湯で働くヒロイン・いづみ役に橋本環奈さんをキャスティング。ほかにも天童よしみさんや窪田正孝さん、生見愛瑠さんら多彩な顔触れが湯に華を添えています。
脚本を手掛けた小山薫堂さんは、日本人の入浴という行為を文化として捉えた「湯道」の提唱者。湯道を極めし脚本家が企画した映画とあって、さまざまなタイプのお風呂やサウナを見ることができるのも本作の魅力といえます。まるきん温泉はいくつかの銭湯をモデルにした架空の舞台ですが、人情味あふれる入浴シーンはこちらまでお湯の温もりが届いてきそうなどほど。お風呂好き必見の作品です。
サウナや温泉に行けず、ストレスを溜め込んでしまっては本末転倒。そんな時は“見るだけでととのう”映画を通して、多忙な日常生活を乗り越えられたらいいですね。